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さんあくにんものがたり

三悪人物語

山本 周五郎

忍術千一夜 第二話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页

青空文庫

二

「もわかた、でじょぶだ、こんやろ」

市町の角に番所がある、その手前へさしかかったとき、後ろから三人を追い越して、一人の娘がばたばたと番所へかけ込んでいった。

二

「大変です来てください」

娘は狂気のように叫ぶ、

「いま押込がはいって家じゅうの物を持っていこうとしています。どうか早く、早く来てください」

番所の中には三人の番士がいた。土間の炉に火を焚いて、干魚を焼きながら、ちょうど煮燗で酒を始めたところである。「押込だって」と、番士の一人が云った、彼はむっとしたように面をふくらませた。

「それはここじゃない、係りが違う、ここへそんな事を訴訟して来たって、――まるで係りが違う、冗談じゃない、押込だなんて」

「ではどこへ、どこへお願いしたらいいんでしょう」

娘は半ば狂乱して叫ぶ、

「もうこれで三度めなんです、みんな持っていかれてしまいます、どこへいったら助けてくださるでしょうか、お係りはどこでしょうか」

「そうさ、たしか、――広小路の札場だったかな」

「札場のお番所へはもうゆきました」

「それじゃ西浜かも知れない」

番士はこう云いながら焼けた干魚を皿へ取った、

「このごろはよく係りが変わるから、そうさ、たぶん西浜だろう」