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さんあくにんものがたり

三悪人物語

山本 周五郎

忍術千一夜 第二話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页

青空文庫

「うーん」

権頭が感じ入ってうなる、

「役人なんてものは学があるもんだ、ちゃんと理の立ったことを云うぜ、ああ理詰めでこられちゃあぐうの音も出やしねえ、――うう寒い、つっ走ろう」

市町の中ほどに「御休処」と軒行燈の出た家がある、権頭の二人の盟友はそこへ入っていった。燈火禁制に軒行燈の出ているのもふしぎだが、中へ入るとそれどころではない、大きな八間の吊り燈が幾つもあり、行燈、燭台で、家じゅうがまぶしいほど照り輝いている、土間の床几は片付いているが、大小十幾つの部屋はいっぱいの客で、贅を凝らした魚鳥珍菜に、酒徳利を並べる者、精げた飯を食いちらす者、唄う声はやす音、禁令法度などはどこ吹く風かという景色である。権頭が板場へ顔を出すと、二十七八になる女が現われた。眼と唇つきのみだらがましい、しかしずばぬけた縹緻である、――彼女は土間へやって来て婉然と三人にうなずいた。

「寒かったろう御苦労だね、いま一杯つけさせるから飲んでておくれ、権、おまえその床几を下ろして、そう、隅のほうがいいね、――断わっておくがつぶれちゃあいけないよ、今夜は大事な頼みなんだから、いいかい」