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さんがつのそらのした

三月の空の下

小川 未明

「民政」1934(昭和9)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,005 字 · 6 页

青空文庫

控え室をのぞくと、乞食かと思われたようなよぼよぼの老人が、ふろしき包みをわきに置いてうずくまっていました。

院長は、その老人と、取り次いだ看護婦とを鋭く一瞥してからいかにも、こんなものを……ばかなやつだといわぬばかりに、

「みてもらいたいというのは、この方かね。」と、ききました。

「さよう、私でございます。遠いところ、やっと歩いてまいりました。」と、老人はとぎれとぎれに答えました。

「遠いところ? なんで、もっと近所の医者にかからなかったんだね。」

「だめです、いいお医者さんがありません。」と、老人は頭を左右に揺すりました。

(そうだろうとも、だれが、こんなものを見てやるものだ。このばかな女でもなければ、一目見て追い帰すにちがいない。いったい、医者というものをなんと心得ているのだろう。)

「おじいさん、せっかくだが、私は、これから急病人の迎えを受けているので、出かけなければならないのだ。だからすぐみてあげることができない。どうか、よそへいってもらいたい。」

院長は、そばに、まごまごしている、看護婦の顔をにらんで、奥へさっさとはいってしまいました。

「じゃ、どうしてもみてくださらんのか。