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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

あっちこっちでサイレンが鳴っているけれど、ここのだけはその幾通りかの音色をぬーと凌いで、息も長く、天へ大入道が立つようだった。このサイレンが鳴り出すとその音の太さ高さから附近一帯の家並の小ささが今更感じられる。

残業の日で、一しきりサイレンにふるわされた空気も鎮り、夕方のすきとおったような西日が窓から見える雑草の色を目にしますと、サイは冬の間には知らなかった気持が胸から脚へと流れるのを感じた。淡い気怠るさのような、また哀愁のようなその気持は、空気の柔かなこの頃の夕方のひととき、サイのぽってりした一重瞼を一層重げにするのであった。

窓際に小さい円い腰かけをもち出して、膝の上に弁当の包をのせたまま、そんな気分でいるサイのわきへ、てる子が、

「一緒にたべましょうね」

とよって来た。年の少いてる子は、快活で、弁当箱のふたについた御飯粒を箸の先で拾いながら、

「あらいやだ、母ちゃんがまたこれ入れている、私末広きらいなのに……千葉の親類がこんなものをくれるんだもん」

そう云いながらサイの弁当をのぞいた。

「ちょっとおかずとりかえない?」

切干の煮つけをサイは昼もたべた。