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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

涙をこぼしたら、いくらか気分がすっとした。手紙の様子では勇吉もだんだん馴れて来ているらしい。でも、たった一ヵ月足らずのうちにゴム裏草履が三足にシャボンを二つもとられたとはどういうんだろう。田舎者だから揶揄われているのかしら。当惑しながら、黙っている勇吉の丸い顔がサイの目に浮ぶようである。

蒲団をあげて積んだ上へ便箋を置いて手紙をかきかけているところへ、

「是非サイちゃんにみせたいものがあるんだがね」

婆さんが重そうな風呂敷包を下げて入って来た。

「――ホーラ、どう? 何ていい縞だろう!」

くりひろげられたのは伊那紬で、正絹まがいなしの本場ものが今回限り一反二十円なのだそうだ。

「小父さんの友達から荷が今ついたところさ。サイちゃんには特別五ヵ月月賦でいいにしとくよ。月四円でこんな物が出来るんだからいいねえ。娘が二十にもなりゃ帯一本だって大事な身上だ」

躊躇したあげく、サイは到頭半分云いまかされた形で、藍と黄のを一反とることにしてしまった。

「お金がすまないうちに着なさんなとは云わないから、安心おし」

昼飯の間じゅう、婆さんが余り物のあがったことをく喋るものだから、これも夜勤あがりで寝ていたのを二階からおりて来て一つチャブ台でたべていた旋盤工の清水が、