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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

珍しく定時間が続いている。その日は午後になって降り出した驟雨が運よくひけ前にあがった。雨に濡れた低い屋根屋根が西日にテラテラして、どこかで雀が陽気に囀る声がしたりしている。洗われた大通りはいつもより遠くまで見とおされて、銀杏の街路樹の色が青蝋燭の列に思える。サイは瑞っぽい空気を心持よく吸いこみながら、ゆっくり歩いて、ペーヴメントが一方はロータリについて右へ曲る本通り、もう一方は真直橋をわたって先へゆく角へ来かかった。

丁度その二股になった橋よりの歩道のところに茶色に塗られた大型トラックが積荷へ被布をかけてあっち向きに停っている。歩道のところに白バイが来ている。サイの歩いてゆく側の歩道のところに人がかたまっている。だんだんそばへ行って、サイは思わずセルの袂で口元をおさえた。トラックの後の車輪の間に菰のかぶせられたものがある。自転車が一台トラックからすこし離れたところにひっくりかえったままになっている。即死らしかった。広くてきれいな雨上りの車道を自動車やトラックがそこまで来かかると、一様に感情をあらわしてスーと速力をおとし、しかし角で停車出来ないところだから、見かえりがちに徐行して過ぎてゆく。