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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

速力をおとしてホームに辷りこんで来た列車の、ずっと後方の一つの窓から、日の丸の紙旗の出ているのが見えた。おや、とサイが目を瞠るのと、

「あれです、あれです、日の丸を出すッて云ってよこしているから」

とせわしない男の大声がするのと同時であった。そう云ったのは巻ゲートルの男で、どこからか自分も日の丸の紙旗を出して、頭の上に高く振りかざしながら体の幅で人ごみをかきわけかきわけ進んでゆく。サイは胸が一杯で、頬っぺたのあたりを鳥肌たてながら、おくれないようにその男のうしろにつづいた。

巻ゲートルの男が、合図の日の丸と帽子とをいっそくにつかんで朴訥そうな若い教員に挨拶しているわきをぬけて、サイはそこに二列に整列している三十人ほどの少年たちの一つ一つの顔をのぞいて行った。

「勇ちゃん」

皆と同じように小倉服に下駄穿きで足許のホームに小型の古い支那鞄をおいて立っている勇吉は、サイの声がきこえないのかぼんやりした視線を周囲の雑踏に向けたままでいる。サイは思わず故郷の訛をすっかり出して、

「コレ、勇ちゃんテバ!」

と弟の肩をゆすぶった。

「なーにぽけんとしてんのヨ」

目へ涙をうかべながら笑って自分をゆすぶっている桃色のレースの派手なショールをした若い女が姉のサイだとやっと判ると、勇吉は、