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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
在线阅读岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 页
」と、わたしは子供らしく強請った。
「じゃあ、まあお話をしましょう。なに、別に勿体をつけるほどの大事件ではありませんがね。」
老人は笑いながら話しはじめた。
安政三年の三月――御承知の通り、その前年の十月には彼の大地震がありまして、下町は大抵焼けたり潰れたりしましたが、それでももう半年もたったので、案外に世直しも早く出来て、世間の景気もよくなりました。勿論、仮普請も沢山ありましたが、金廻りのいゝのや、手廻しの好いのは、もう本普請をすませて、みんな商売をはじめていました。猿若町の芝居も蓋をあけるという勢いで、よし原の仮宅は大繁昌、さすがはお江戸だと諸国の人をおどろかしたくらいでした。
なんでもその三月の末だとおぼえています。日本橋新乗物町に舟見桂斎という町医者がありましたが、診断も調合も上手だというのでなか/\流行っていました。小舟町三丁目の病家を見舞って、夜の五つ頃(午後八時)に帰ってくると、春雨がしと/\降っている。供の男に提灯を持たせて、親父橋を渡りかゝると、あとから跟けて来たらしい一人の者が、つか/\と寄って来て、先ず横合から供の提灯をたゝき落して置いて、いきなりに桂斎先生の左の胸のあたりを突きました。