轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さんがいばんれいとう

三界万霊塔

久生 十蘭

「富士」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,716 字 · 39 页

青空文庫

電送通信もロイタース・エコノミック・サーヴィスも帯封のまま脇卓の上に積みあげ、新聞や景気速報は溜塗の新聞いれごとさげさせてしまう。空気のぬけたような、しまりのつかない日を送っていた。

「やられたのかな」

頬を撫でてみてもかくべつ痩せたとも思えない。万力のような顎は依然として強く張りだし、握力も、むかし南方の海底で、十五ポンドの鑿岩用の鑿棒でダイバーの背柱を突き砕いて殺しまわったあのころと変らない。どこに原因があるのかはっきりしないが、なにかひどく気むずかしくなって、社長室のイメージもいつものように溌剌とした刺激を与えてくれなかった。

「戸田さまが」

「伜のほうか、おやじのほうか」

「ご隠居さまのほうでございます」

「ここへ通せ」

戸田五平が中風気味の足をひきずりながら広縁へ入ってきた。いっしょに地獄も見てきた濠洲以来の仲間で、終戦後間もなく昭和曹達の専務の役を息子に譲って隠居し、めったに外出もしない男が、どうしたのかスーツなんか着こんですましている。

「すっかりひっこんでしまったそうじゃないか。どうした」

「べつにどうもしない。お前こそどうしたんだ、洋服なんか着こんで」