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さんびゃくねんご
三百年後
小倉 金之助
「図書」岩波書店、1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,261 字 · 3 页
三百年前の書物というのも、私に取っては、娯みに読むのではなく、実は仕事のための資料なのだった。
批判することは、批判されるよりも苦しいのだが、しかし、その苦しい批判を外にして、どこに学問の歴史があり得るだろう。
ところが世の中には、批判されるのを、ひどく厭がる学者があるらしいが、私からいわせると、そんな先生は、一日も早く廃業するに限ると思う。
こう云うと、いや真面目な立派な仕事をするからこそ、批判の的になるのである。だから、批判を免れるつもりなら、箸にも棒にもかからぬような、誰も相手にしないような、つまらぬ仕事(?)ばかりやればよいではないかと、皮肉な連中が、にやにや答えるかも知れない。
なるほど、それは一理がある。けれども私にかかっては、それでも駄目なのだ。私は立派なものを批判すると同時に、つまらないものをも批判するつもりなのだ。立派な作品がその時代を代表するなら、愚作もまたその時代を代表する権利を持っている。愚作の意味を認め得ないような歴史家は、片眼しか持たないのだと思う。
ところで私は、遺憾なことに予言者ではないのだから、三百年後のことは見当も付き兼ねるが、しかし三百年後のわが日本は、文運も層一層隆々として栄えることと想像される。