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さんりょうきょう

三稜鏡

佐左木 俊郎

(笠松博士の奇怪な外科手術)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,347 字 · 42 页

青空文庫

手先が不器用でも外科医として差支えが無いかどうか?……外科医術の上に頭脳の方を必要とする分野はないだろうか?……外科医術の最大の理想とする首と胴との接合は果して可能かどうか?……)と云う問題を、酷く気に悩んで来ていることは確かであった。同時に、患者は、酷く小心の者で、手術の光景を目撃することの出来ないのは勿論のこと、自分の最初の目的である外科医が、自分には不適当であることを知りながらも、世間体を怖れて思い切れずにいることなどが、私には判然と感じられた。これはむしろ、小心者の、何事をも躊躇ばかりしていて、結局は何事も決断の出来ないような、藻掻くような焦燥に起因している病状であった。

私はその療法に就いていろいろと考えた。併し、結局は、彼に、外科医として立つことを諦めさせるのが、一番いいように思われるのであった。彼が最も気に悩んでいる問題を、徹底的に否定し、無理にも(……手先が不器用では外科医には全然なれないし……外科医は職工のようなもので頭脳などは第二第三の問題であろう……理論的には容易に出来そうに思われる胴と首との接合も実際には不可能である……魔術師のように器用に動く手の持主だけが外科医として成功するのだ……)と云う風に思い込ませて、思いきれずに迷っている希望を全然断念させなければならなかった。