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さんかくけいのきょうふ
三角形の恐怖
海野 十三
「無線電話」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,969 字 · 24 页
そして直ぐさま身を飜えすようにして門前につづく広い空地の片隅に佇んで細田氏の姿の現われるのを今や遅しと待っていました。
果して間もなく細田氏は例の力なさそうな姿を門前にあらわすと、スタコラと白い路をすすみ出ましたが、どんな無神経ものの眼にでも気がつかずにいない赤い三角形の蟇口はやすやすと細田氏の注視の標となり、氏の桐の下駄は戛と鳴って、三角形蟇口の前に止りました。直ぐ拾い上げるだろうと予想した事ははずれて細田氏はステッキでちょいちょいと其の蟇口をいじって見ましたが、突然顔をあげて辺りを見廻しました。勿論私の姿も目に入るに違いなかったので私はつと横の路次の方へ大急ぎで飛び込んでゆきました。私は細田氏が何か大声をあげて私を呼びはしないかと思いましたが、一向声もきこえず、いつ迄たっても元のように静かでした。
それから五分程過ぎたので私は路次から顔を出して窺いますと、細田氏の姿はもうありませんでした。私はすっかり計画が当ったのに雀躍りしながら、さりげなく蟇口を棄てたところに近付いてみますと、其の蟇口は側の溝の中に転って居ました。それは多分ステッキで上から押して見て何も入っていないと知るとステッキの尖でこの溝へ弾き込んだものにちがいありませんでした。