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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
そして黒いのなら、少くとも五百年は経っていよう、と皆に話したとかで、仕舞いには事実として承認された。
ところが、おかしいことには「何せ黒狐を見るほどの人だから」という、一つの新しい貫目が彼についた。
けれども、この黒狐を見た人は、その頃、夜道さえすれば、きっと狐に引きまわされるというめぐり合わせになっていて、多いときには、五里の道を来るうちに、六七度化かされそうになったことさえある。
それも皆、始めから、化かされない用心に、自分の方から狐を詐(だま)しにかかっては、失敗したのである。
そして、一番最後に、またどこかの狐が廻りはじめたときには――私は知らないが、彼の話によると、狐が人を騙す第一には、先ず或る距離を置いて、グルグルと体の周囲を廻って歩くのだそうだ。――さすがの彼もうんざりして、いきなりどさりと田の畔に腰を下して、煙草を喫(ふか)しながら、半分やけになって、狐を盛にやじったのだそうだ。
すると、三四度、稲をがさがさいわせながら、廻ったあげく、彼の度胸に断念したと見える狐は、どこへか行ってしまったそうである。
彼の意見に従えば、この年以後附近一帯狐はすっかり跡を絶ってしまったから、多分どこへか宿換えする名残りに、さんざん「あばけて」