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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
今まで要らなかった家賃、税などというものまで取られるので、暮しはだんだん難かしくなって来る。
難かしくなろうがどうなろうが、彼は一向平気で放って置くから、なおひどくなって、婿に食扶持(くいぶち)まで貰わなければならないようになってしまった。
それでも、彼は平気らしいが、今度は婿の方で放っては置かれない。俺の世話になるからには、口を減らすに、役にも立たない女房と別れてくれと、申込んだ。
彼は、「ウン、そうすべ」と、言下に承知した。そして女房にも、身の振方をきめてやるという条件つきで、そのことを話すと、女房も、「それも、よかっぺえて……」と云う。
まるで、何に比較したらいいのか分らない単純さで万事は運び女房はいきなり彼の家から、どこかの商人の家へ後妻に迎えられることになったのだそうだ。
もちろん、いざこざの起ろうはずはない。嫁入りの日、彼は自分まで嬉しそうにニコニコしながら、念入りに女房の顔を剃ってやったり、髪結いの迎えに行ってやったりした。
乏しい中に、新しい帯まで祝ってやった彼は、自分も仕合わせそうな顔付きで、女房を嫁入らせたのである。
独りになった彼は、前より一層のんきになって、気が向くと朝出たぎり夜まで家をあけっ放してどこへか行って来る。