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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

終いにそう云った。

次の日はそれでも三時間程会った。

「こんな事はお前等ばかりでなくて、お前等の後をつッついている不穏分子がいるから、きいてやるワケには行かない。」

不穏分子というのは「農民組合」のことだそうだ。

とうとう駄目だ。話にならない。駄目と分ったら、直ぐ帰る。

健は始めて伴から頼まれて、小作人の家全部を廻って歩いた。――今度のことはモウ成行きがきまっている。そうなったら一人でもハグれないようにするためだった。――一廻り、廻って来ると、健は他愛なくなる程疲労した。

「ん、ん、ん!」

ときいてくれる隣りでは、何しに来やがった、という顔をした。

「困るには困るども、穏当でねえべもしな。――後がオッかなくてよ。」

そんなことも云う。

「岸野さんだら、一度ウンとやって置く必要あるんしな。」

そして何処ででも、「へえ、健ちゃが、健ちゃがこんな事するようになったのか?」と、不思議がられた。

その度に健は耳まで赤くして、ドギマギした。

然し、たったそれだけの事をしただけで、健は何か大きな自信と云ってもいいものをつかんだように思われた。

「納屋にあるのか?」