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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
健が裏で、晩に食う唐黍をとっていた時だった。
「健ッ! 健ッ※(感嘆符二つ、1-8-75)」――母親の叫び声が家の中でした。
その声にただ事でない鋭さを感じて、健はグイと襟首をつかまれたと思った。
家の中にかけ込んだ。かけ込んで――見た。
吉本管理人! 剣! 巡査だ! 役場の人! 鞄! 一瞬一瞬のひらめきのように、いきなり健の眼をくらました。
「気の毒だが、小樽からの命令で、小作米を押えるから。」
吉本は戸口に立ったきりの健に、憎いほど落着いた低い声で、ゆっくり云った。
――健はだまって裏へまわった。皆はゾロゾロついてきた。母親はオロオロして、吉本や特に親しかった巡査の後から同じことを何度も云った。
「お母さん、どうも仕方がないんだ。」
巡査はうるさそうに云った。
十
「小作調停裁判」
又順序をふんだ!
こうなると、健がジリジリした。――「小作調停裁判」を申請するというのだ。
「分りきった無駄足を何故使うんだ。」健はハッキリそう思った。――何んと云ったって、阿部も伴もやっぱり年寄りだ、とさえ思った。
然し、ただ、今迄とはちがって、兎に角「表へ出る。