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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

│ 「労」「農」提携争議大勝利、万歳※       │

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「もう五つ――」

争議団は小樽の労働者達に見送られて、――一ヵ月以上の「命がけ」の(伴は、あとで思い出すと、背中がゾッとする、とよく云っていた。――よくまアやってきたもんだ。)闘争の地を後にした。

あと九ツでH停車場だ!――もう七ツだ――もう五ツ――四ツ――三ツ、と、なると皆は云いようのない気持に抑えられた。近くなればなる程、小作人達はムッつり黙りこんできた。

――伴の厚い、大きな肩が急に激しく揺れた。と、ワッと泣き出してしまった。雪焼けした赭黒い顔に、長い間そらなかった鬚が一面にのびていた。――伴は自分の肱に顔をあてた。そして声をかみ殺した。

嬉しかった! ただ嬉しい。それをどうすればいいか分らないのだ。

女達も思わず前掛で顔を覆ってしまった。

十六

「毎日毎日、一月も考えた。」

「ねえ、健ちゃ……」

節は余程云い難いことらしかった。

「……お父な、嫁にでも直く行ぐんでなかったら、都会さ稼ぎに出れッてるんだども……!」