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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
健とは不思議に気が合った。――毎日の単調さ、つらい仕事、それで何処迄行っても身体の浮かない暮しをさせられていれば、誰だって若い男は「のべ源」になる。ならずにいられるものでない。皆、心の隅ッこに「のべ源」の少しずつを持っているんだ。健はそう考え、「のべ源」には他の人のような悪意は感じていなかった。――どの村にも、実際ぐうだらはいたし、居る筈だった。
――然し、何時迄グウだらを繰り返えしたって、どうなるものか、健は此頃はそう思ってきていた。グウだらが悪いんじゃない、グウだらにさせるものがある。それを誰も知っていない、そう思った。
「な、ま、ええさ。今晩飲めるんだ。」
「源、酒の……」
「のべ源」は、分ったよ、分ったよ、という風に頭を振った。伴は「どうしたい。」と、ひやかした。
「模範青年さんにかかるとネ。」頭をかいて、眼を細くした。
「模範青年ッて誰だ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
健は不機嫌に云うと、そのまま黙ってしまった。
阿部は口の中だけで笑っていた。
「野にいる羊」
女達は酒盛の用意のため、三時から管理人のところへ出掛けて行った。嫁取りだとか、法事だとか、何かのお祝いだとか、そういう事だと、お恵達は誘い合って、喜んで出掛けた。