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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
」
「岸野さんどう出るかな……。」
不貞腐れて、時々酒に酔払ってくる小作も出来た。――辻褄の合わないことを、一人で恐ろしく雄弁にしゃべった。
「ああいうのば犬ッて云うんだ」
三井の砂川炭山へ、馬を持ってトロ引きに出ていたもの、H町の道路普しんに行っていたもの、灌漑溝の土方へ日雇に行っていたもの、山林の夏出しに馬をやはり持って行っていたもの……それ等が九月中旬過ぎると、みんな帰ってきた。
実が黒く腐っていても、穫入れて「米」にしなければならない。それから一ヵ月位の間、小作は朝三時頃から夜の七時、八時頃迄働き通した。――収穫は「五割」減っていた。
五割! では小作は一体何のために働いたんだ。
健は稲のいがらッぽい埃で、身体をだるまにしながら、「やめた、やめた!」カッとして、そのまま仕事を放り出して、上り端に腰を下してしまった。
「恵、少し踏め!」
お恵は兄の剣幕を見ると、イヤイヤ立ち上った。――台所にいた母親は黙っていた。
「半分だ。――ええもんだな。一年働いて半分しか穫れなかったら、丁度小作料だべ。岸野さそのままそっくりやっても足りねえ位だ。――百姓がよ一年働いたら、一升位な、たった一升位気ままに自分の口さ入れたって、罰も当るめえ……。