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ふしぎなるくうかんだんそう
不思議なる空間断層
海野 十三
「ぷろふいる」1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,651 字 · 30 页
「人を殺した。とうとう乃公は、人殺しを実演してしまったのだ!」
乃公は、床の上に倒れている女の方へ近づいた。眠ったように女は動かない。見ると衣服の胸の上に、大きな赤い穴が明いて、そこから鮮血が滾々と吹きだして、はだけた胸許から頸部の方へちろちろと流れてゆくのであった。――男はいつの間にか、姿が見えない。ドーアから飛ぶようにして出ていったのであろう。
「ああ、乃公は人を殺してしまった……」
乃公は呟いた。しかし、そのとき、どっかでせせら笑うような乃公の声を聞いたように思った。
「うん、そうだった。いま、乃公は人殺しの夢を見ているんだ。……さあ、あんまり駭くと、惜しいところでこの夢が覚めてしまうぞ。本当に人殺しをしたように、がたがた慄えていなくちゃ駄目じゃないか。もっと怖がるんだ。もっともっと……」
――そうこうしているうちに、乃公はそれから先の記憶を失ってしまった。女を殺した場面は以上のところまでしか覚えていない。
2
どうも夢の話だというのに、あまり詳しく話をしすぎたようで、さぞ退屈だったろうと思う。要は、乃公のみた夢というのが、いかにはっきりとしたものであり、そして不思議な現象を持っているかということを理解して貰いたかったのであった。