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ふしぎなとり

不思議な鳥

小川 未明

「趣味」1910(明治43)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,797 字 · 16 页

青空文庫

私はこの黒い鳥の啼声を聞いたとき、もう二度と太陽は現われずに、こうなってこの世がいつまでも夜になってしまうのであるまいかと思った。若しそうなったら何うなるだろう。人は外へ出て働くこともならず、木は、草は、あのように薄暗い、飴色の空の下に悲しそうに立っている。彼方の家もあのように黒く、この厭らしい黄色な空の下に動かずに浮き出ていて、すべてが黄色な空の下に唖のように音なく黙っている……何時までも何時までも黙っている。ただ見るものは、飴色の空に折々悪夢のような形の定まらぬ雲が出たり、消えたり、鈍く鈍く動いているばかり。而してこの黒い鳥が、やはり厭な斯様声で啼きつづけているだろう。けれどいつかこの黒い鳥も羽が疲れて地面に落ちてしまい、厭な声も次第に疲れて涸れてしまうだろう。そうすればこの世は全く声というものが絶えてしまう。犬も死んでしまえば、鶏も死んでしまう。全く生物の声は絶えてしまう。……けれど最も最後まで啼いているものはこの黒い鳥であるというような気がした。その時、地球の上に風が吹くだろうか?……やはり吹くかも知れない。けれどそれは冷たい、氷のような風である。