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おかのした

丘の下

小川 未明

「小学四年生」1938(昭和13)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,401 字 · 5 页

青空文庫

日の光は、ほのかに足もとをあたためて、草のうちには、まだ生き残った虫が、細い声で、しかし、朗らかに歌をうたっていました。

「なんて、平和で、静かな景色だろう。」

彼は、懐中から、スケッチ帖を出して、前方の黄色くなった田圃や、灰色にかすんだ林の景色などを写生しにかかったのであります。

「あの光るのは、水かな。」と、彼は、田の中を流れる小川に目を注いでいました。そのとき、がやがやと声がして、丘の下を、学校の遠足が通ったのであります。

「どこの学校かしらん。こんなに遅くなってから、遠足するのは?」

年雄は、鉛筆を握ったままで、しばらく、その列をながめていました。彼の目は、いま列の先頭に立って歩いていく、先生の姿にとまったのです。

「小山先生に、よく似ているが。」

小山先生こそ、いままで思い出していた、やさしい先生でありました。列の先頭になっていく先生は、背が高く、黒い洋服を着て、うつむいて歩いていられます。小山先生の姿と癖そのままであります。

「ああ、あの太った、洋服を着た女の先生も?」

年雄は、その先生が、学校にいられたのを記憶しています。

どきどきする心臓を、こらえるようにして、目をじっと下に向けていると、列の終わりに、こんどはロイド眼鏡をかけて髪を長くした、若い先生が、後れながらついていかれます。