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ちゅうがくへあがったひ

中学へ上がった日

小川 未明

「台湾日日新報」1939(昭和14)年4月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,232 字 · 5 页

青空文庫

哲夫は、学校の門を出ると、やはり悲しみがこみ上げてきました。もう明日からは、この門を通らないであろう……と、幾たびとなく振り向いて、あちらへ道を曲がったのです。

「宮田くん。」と、彼は、前へいく少年に声をかけました。少年は、立ち止まって、哲夫を見返ると、にっこり笑いました。

「宮田くんは、どこへ入ったの?」と、哲夫はききました。少年は、すこし顔を赤くして、

「僕は、もう学校をよして、家のおてつだいをするよ。」と、いいました。

「そうかい。」と、哲夫は、うなずきました。

二学期のときでした。宮田がいったことを思い出したのです。

「僕、こんどの試験に甲を三つとれば、お母さんが、自転車を買ってくれるといったよ。」

しかし、その後、自転車を買ってもらったという話をきかなかったから、甲が三つとれなかったのだろうと思いました。けれど、宮田くんのお母さんは、やさしい、いいお母さんだという感じがしたのでした。宮田くんの家は八百屋です。

「先生は、勉強をしても、働いても、その精神に変わりがなければ、お国につくすと同じだとおっしゃったから、大いに働きたまえ。」と、哲夫は、いいました。