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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
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この村からは陸海軍大佐が各一名でた。陸軍の小野は南方で戦歿し、海軍の佐田は終戦後帰村した。余がそれである。
余がその村の村長となったのは決して自分の意志ではない。たまたま前村長が病死して、他に適当な人がなかったために、推されるままに引受けてしまったのだが、人々の話では役場へでて村長の席に坐っているだけでよいような話であったし、自分の記憶でも、余の叔父が村長のころは用あれば役場の小使が迎えに来たもので、さもない限り彼は終日自宅で碁をうっていたものだ。その思い出を助役の羽生に物語って、そのようでよろしければやれないこともないと云うと、彼はそれに答えて、
「御承知の如くに終戦後はがらりと世相が変りまして、この山里でも都会なみにかれこれと理窟を申したがる人物もおりますので、毎日定刻の御出勤だけは御面倒でもお願い致したいのです。役場で終日碁をうたれるのは、それは誰に遠慮もいらぬことです」
「いや。私は碁ばかりでなく一切趣味のない男で、植木や畑いじりぐらいの楽しみがせいぜいだね。そんな私だから、それが日課ときまれば毎日定刻の出勤は苦になるどころか、身体にもよろしかろう」