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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
「左様。私は百姓の倅に生れ、半生軍人であったが、藁にもぐって寝ることを志すような勇気ある決断を選ぶことを知らなかった。あの娘に忠告するのは、私の身にあまることだと思うよ」
余は不覚にも泣きぬれてしまったのである。余の一生は、愚かのままに、すでに過ぎ去ってしまったのだ。もはや取り返すすべもない。
余は男子であり、軍人であったが、マリ子の如くに身を挺して事に処する態度に於ては全く欠くところがあったようだ。今日、老残の身をもてあましているのもいわれなきではない。わが過去に於てマリ子の片鱗だにあらば、なお救いのあろうものをと思った。
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マリ子とその家族は土間の宿直室へ戻って住んだ。病人の弟だけは手製の寝台にふとんをしいてねているが、マリ子とその母は押入にねているとも云われ、土間に藁をしいてもぐりこんでいるとも云われ、諸説紛々であった。
羽生や根作らは意外の結果におどろいた。再び緊急村会が召集されて対策が凝議されたが、余は特に次のような発言を行った。
「私は村政を皆さんに任せ放しにして無為無能をもって自任している村長であるから多くのことは望まないが、ともかく村長には変りがないから、皆さんの決議の如きは一応これを私に報告して村長の意見も徴してもらいたいものと思う。