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ちゅうよう

中庸

坂口 安吾

「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页

青空文庫

「だまれ! 人非人。貴様であろう。この学校に放火したのは。貴様がこの村の全ての不幸の元兇だぞ」

「私が放火したと仰有るのですか」

「人の不幸をたのしむために床板をはぐことを発案したのは貴様ではないか。貴様のほかに村の学校を燃す奴がいるか」

「これは面白い」

彼は車から離れ、右手に金槌をぶらさげて余に近づいてきた。

「私はね。誠心誠意、村につくしたつもりです。私財をなげうち、己れをむなしゅうして村のために尽したのです。しかも私は自分の名誉をもとめたこともないのです。村長になろうとすらも考えませんでした。下積みのまま、ひそかに村につくすのが誇りでした。私がもとめた報酬は、ただささやかな満足。人知れぬ満足。しかるにあなたが私に与えた報酬は無実の放火犯人。面白い。私はあなただけはいくらか信用していたが、要するにあなたは面白い人だったね。俺を無実の放火犯人にするとは!」

突然彼は躍りかかった。余は全身に滅多打ちの襲撃をうけ、最後に眉間にうけた一撃によって地上に倒れた。

余の傷は幸いに軽微であったが、世評は余にかんばしくないようである。余は小学校の床板を張る才覚もつかないような無能な村長であったと云われている。