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ちゅうしゆうき

中支遊記

上村 松園

「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页

青空文庫

似ているとか似ていないとか言っているのだろうが、そうすると折角のモデルの皇帝までがのこのこと写生帖をのぞきに来るのには弱った。

モデルにもなれず、写生帖ものぞくひまもなく舞台に出て行った役者の一人は、舞台をすますと大急ぎで走り戻り、自分も写して貰いたいのだろう、ほどよい処に陣取って形をつくってすましかえっている御愛嬌には笑わせられた。私はふっと特務機関長のところの門衛の支那兵を思い出したりした。

杭州にて

杭州では西冷印社という印肉屋に朱肉を見に行ったりした。少し茶色がかった朱肉などもあった。

西湖に姑娘が漕ぐ舟を浮べ私や三谷は写生帖を持ちこんだ。

平仙寺雲林寺等の山門は戦禍をうけていたが寺々のものは何ともなっていなかった。その寺の奥には、寝床、便所、風呂場もある大きな防空壕が廃墟のように残っている。いずれ支那兵あたりが使用したものであるが、いまはそれも見世物で、私達が近よってゆくと、五つ六つの襤褸をまとった女の子が、

「今日は……」

と、日本語で声をかけて案内にたった。

ひとりひとり蝋燭を一本ずつもたされ壕にはいると、女の子はまた日本語で、