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えいがをつくるはなし

中谷宇吉郎集 第三巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画を作る話、低温室だより、凍上の話、壁画摸写、雪後記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,667 字 · 95 页

青空文庫

一枚の葉書に十五人ばかりの割で、それぞれ二三行ずつ御礼の言葉だの印象だのを書いて寄こされたので、大体蟻位の大きさの字でぎっしり一面に書き込んであった。まだまだ若いつもりであったが、流石にこの葉書にはちょっと眼がまじまじとしたので、眼鏡をとり出して、一つずつ拾って読んで見た。

色々な文章があって、特にこういう場合は大抵皆同じ意味の言葉になってしまうので、それを逃れようと色々苦心のあとが見えたことも大変面白かった。適当な文句は皆初めのうちに書く人が使ってしまうので、後に廻った人が、辛苦の末に警句を吐いたり、或は簡単に降参してしまったりした形跡があって、なかなか愉快だった。そしてこの寄せ書を読みながら、ふと前に言った卵の話を思い出した。研究室の生活にも、案外の役徳があるものである。

こういう修学旅行の組は、六月、大学の楡の梢に郭公が鳴き始めると間もなく、例年の行事のように札幌を訪れて来る。そして白い日傘が、よく鮮かな緑の芝生の間に見かけられるような日がしばらく続く。それにもいつの間にか気が付かないようになると、もう夏休みである。セルの感触を乾いた肌に楽しんでいるうちに夏休みになってしまうのは、少し贅沢なようであるが、研究室の仕事の能率が上って来るのは、休みに入ってからである。