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『せっかずせつ』のけんきゅう

中谷宇吉郎集 第二巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『雪華図説』の研究、『雪華図説』の研究後日譚、兎の耳、英国の物理学界と物理学者、温泉1、米粒の中の仏様、清々しさの研究の話、墨色、大謀網、長崎留学、鼠の湯治、民族的記憶の名残、室鰺、雪協議会の報告、真夏の日本海。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,098 字 · 172 页

青空文庫

を認めてくれないようである。それに墨色といえば墨ばかりでなく硯も重要な因子になるので、それまではとてもN氏の力では蒐集することが出来そうもなかった。それでもN氏はやっと端渓の小さい硯を一つ手に入れ、唐墨の破片を数片、宋その他の墨も数片は集めていた。蒐集品としてはこれらの品は全く一笑に附せられるものであろうが、私が興味をひかれ、かつ感心したのはその研究態度であった。従来の名墨の研究というのは、その系統や彫刻の図柄の研究が多いので、墨色自身の組織立った研究というものは極めて稀れかあるいは絶無に近いのだそうである。ところがN氏の研究は全く科学的で、ちょうど物理学者のやり方と筋の上では完全に一致しているのにちょっと驚かされたのである。N氏は物理学の方面の教育はほとんど受けていないのにもかかわらず、その研究の心構えは立派な物理学者であった。勿論器械も装置もほとんどないのであるから、その研究は物理的研究ということは出来ないが、それだけに氏の「物理的研究」には一層の興味がひかれたのである。

氏は他の条件を一定に決めなければ、ある性質の比較は出来ぬということをちゃんと心得て、まず用いる硯をきめ、常にその硯で蒸溜水を用いて色々の墨を磨ってみたのである。