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『せっかずせつ』のけんきゅう
中谷宇吉郎集 第二巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『雪華図説』の研究、『雪華図説』の研究後日譚、兎の耳、英国の物理学界と物理学者、温泉1、米粒の中の仏様、清々しさの研究の話、墨色、大謀網、長崎留学、鼠の湯治、民族的記憶の名残、室鰺、雪協議会の報告、真夏の日本海。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,098 字 · 172 页
私どもの育った北陸の片田舎には、ついこの二十年くらい前でも、こういう民族的記憶による特殊の情緒が、人々の日常の生活の中に深く浸み込んで残っていた。
そこには、現在の自分らの物の考え方のような思考の形式は、まだはいってきていなかったような気がする。あるいはもっと極端にいえば、喜怒哀楽の情までも現代の若い都人士の喜怒哀楽とは異っていたといえるかもしれない。
文藻豊かな私の友人の一人が、いつか西洋のスポーツと日本の競技との底に流れる感情を比較して、その間に根本的なちがいがあるという面白い意見をきかせてくれたことがある。
西洋のスポーツに伴う声は、たとえばオリンピックの放送で聞いた歓声のように、胸一杯に吸った空気が期を得て爆発する声である。こういう声は日本古来の競技にはない。日本の競技に伴う声の代表的なものは、剣道の気合のように、腹の底から絞り出す裂帛の声であるという話なのである。
その話をよく味わってみると、なるほど日本の競技には、剣道の掛け声のような極端な場合でなくとも、いずれの場合にも必ずどこかにこの裂帛の調べがあるような気がする。
そういえば、私たちの子供の頃の北陸の農村の生活を思って見ると、そこには、現在吾々が知っているような歓声が聞かれる機会はなかったようである。