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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页
十年前の山うどの香気を、今ごろになって思い出すというのも、ずいぶん妙な話で、われながら少し可笑しくなる。どうもその理由は、アメリカの食い物が一般にまずいからであるらしい。
これは何も奇矯の言を弄しているわけではなく、本当にアメリカには美味いものが少いのである。もちろんうんと金を出せば、何でもあるだろうが、一般にはそういうことは望めない。普通のアメリカ人が食っているものは、ビフテキか、鶏のフライか、豚の揚げたのかである。品名だけ並べてみると、如何にも御馳走らしく見える。また若い中学生諸君にとっては、本当の御馳走であろう。しかしわれわれ年配のものにとっては、これらはいずれも人体に対する燃料であって、御馳走とはいい兼ねる。というのは、いずれも冷凍か、低温貯蔵品であって、味としては、牛も豚も七面鳥も、いずれも蛋白質の味しかしないのである。
もっともこういう蛋白質には、栄養価は十分ある。それで山うどの香気を知らないアメリカ人は、こういうものを美味しい御馳走だと思って毎日食っているらしい。そして凄い馬力で一日中働いて、どんどん生産を上げている。しかしその生産品のかなりの部分は、諸外国への援助で消えてしまったり、また朝鮮で消耗されたりしている。