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『ケプロン・くろだのこうそう』について

中谷宇吉郎集 第八巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页

青空文庫

というのは、そういう超音速度の飛行には、必ずいちど、重力の影響がほとんどきかない期間が伴なう。宇宙旅行用ロケットの場合は、地球の重力圏外に出ればもちろんのこと、それまでいかなくても、遠心力との釣合で、重力がぜんぜん感ぜられない状態になることがある。すなわち人間の身体が宙に浮いてしまうのである。

いつか月世界旅行の映画が、日本へもきたことがある。あの中に、人間も物体もみな宙に浮いている画面があったが、あのとおりのことが、ほんとうに起るのである。映画の場合は、ふわふわと宙に浮いていて、いかにもきらくそうに見えたが、あれはもちろんトリック撮影である。映画ならそれでよいが、ほんとうにそういう超音速の飛行をする場合、身体が宙に浮いていては、操縦になにか支障が起るかもしれない。それで重力のない世界での人体の生理という問題が、今後の航空医学では、たいせつな問題の一つになってきたわけである。

こういう研究は、実験をしてみるよりほかに道がない。温度や圧力はもちろんのこと、たいていの物理的条件は自由にかえられるが、重力の働かない世界を、実験室内でつくることは絶対にできない。