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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』
中里介山の『大菩薩峠』
三田村 鳶魚
「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页
上
中里介山さんの『大菩薩峠』(普及本の第一巻)を読んでみる。これは最初のところは、奥多摩の地理や生活ぶりが書いてあるので、そこに生れた作者にとっては、何の造作もない、まことに危なげのないところでゆける。しかし例の通り言葉遣いや何かの上には、おかしいところがある。それから武家の生活ということになると、やはりどうもおかしいところが出てくる。これは大衆文芸として、早い方のもののようでありますが、怪しい方でも同じく早いということになるんだろうと思う。
一二頁のところで、宇津木文之丞の妹だといって、この小説の主人公である机竜之助を訪ねて来た女がある。その言葉に「竜之助様にお目通りを願ひたう存じまして」とあるが、この女は実は文之丞の女房で、百姓の娘らしい。文之丞は千人同心ということになっている。竜之助の方はどういう身柄であったか、書いてないからわからない。道場を持っているし、若先生ともいわれているけれども、あの辺のところに、郷士があったということも聞いていない。竜之助の身分はわかりませんが、しばらく千人同心程度としても、「お目通り」は少し相場が高い。