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くぼたべいさいくんのおもいで

久保田米斎君の思い出

岡本 綺堂

「伝記」1937(昭和12)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,435 字 · 17 页

青空文庫

が上演された時に、やはり米斎君の舞台装置、その後しばらく間が切れて、明治四十三年の九月に明治座で、今の歌右衛門が新田義貞をした『太平記足羽合戦』という三幕物を私が書いた。その時分にやはり舞台装置や何かを米斎君に御願いしました。

それから翌年の二月に歌舞伎座で、今の六代目菊五郎が長谷川時雨さんの『桜吹雪』を上演しました。それをまた米斎君が背景、扮装等の考証をなすったのですが、狂言も評判がよかったし、舞台装置や何かも評判がよかった。先ずそれらがはじめで、明治四十四年以後は明治座で新作が出ると、いつも舞台装置を米斎君に御願いするようになりました。私の『修禅寺物語』『箕輪心中』なんていうものもこの年の作で、いずれも米斎君に御願いしたものです。

大正二年でしたか、東京の芝居というものが殆ど大阪の松竹に属することになりました。その時分から米斎君は松竹に関係されることになって、どこの劇場でも新作が出れば米斎君のところへ持込むという風でした。何しろ松竹系といえば、帝劇を除いて東京の有名な劇場は皆そうなのですから、一時は米斎君も彼方此方の芝居を掛持で、随分お忙しかったようです。