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くだん

九段

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第二〇号」1951(昭和26)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,870 字 · 20 页

青空文庫

私もそう思った。

大山は若年にして老成。礼儀正しく、対局態度は静かで、一言にして重厚という大そうな人物評価を得ていた。観戦者が筆をそろえて、彼の重厚な人柄を賞讃していたものだ。

ところが、この名人挑戦対局に至って、いちじるしい変化が起った。彼の重厚な人柄が一変していたのである。倉島竹二郎君の語るところによれば、ただ、呆れるばかりであったというが、不遜とも何とも言いようがなく、すでに自分が名人にきまったかの如く塚田をなめてかかり、それが言行の端々に露骨に現れ、正視しがたい生意気、無礼な態度であったということである。塚田がよく奮起してこの思いあがった小僧をひねりつぶしたのは大手柄であった。

大山の無礼不遜な態度は観戦した人々によって厳しく批判された。敗れた彼に同情した者は――ヒイキは別にして、公平な将棋ファンには殆どなかったようである。彼の敗北を惜しんだ者もいなかった。思いあがった小僧が名人にならなくて良かったというのが万人の胸のうちであったのである。

負けた上に、これぐらい世間のきびしい批判をあびれば、誰しもクサルのが当り前だ。ましてや初陣そうそうのことである。