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ちぶさ

乳房

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页

青空文庫

それを、天下り委員会にまかしといて、謂わば、いなされたんじゃないか」

「そうだ!」

「異議ナシ!」

「今度だって、本部がこっそりクビキリ候補の名簿をこさえて、さし上げたんだっていう話さえあるじゃないか」

「チェッ!」

大会の前後に、各車庫から「傾向的」な従業員が六十人以上警察へ引っぱられ、労救員もその中に何人かまじっていた。あらかじめ、そうしてしっかりした分子を引きぬいてしまった経営者側の意企が、こういういざという場合になって見ると、まざまざ分るのであった。ひろ子は益々くちおしく思った。

全線ストか、さもなければ全然ストには立たない、立っても意味ないという敗北的な考えかたを、指令や方針の解釈に当って争議のはじまりっから、東交幹部の大部分が盛に従業員の心にふきこんで来ていた。情勢がこみ入ると、そういうあれか、これかへの考えかたはどこにでも起りがちであった。亀戸託児所が市電の応援をやりすぎて親たちがこわがりはじめた、その時にもやはり、争議応援を全然打切ろうという意見と託児所ぐらい一つ潰したっていいという見解とが対立して、大谷がその席でその両方とも誤っていることを指摘した。