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ちぶさ

乳房

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页

青空文庫

度々の弾圧で東交の職場大衆の中には、このいかがわしいかけ引きの底をわって、自分たちのエネルギーを正しい闘争の道へ引っぱり出すだけの組織者、先頭に立つべき指導者がのこされていない。それが、はたで見ているひろ子にさえ分った。

場内は、立ちこめる煙草のけむりと一緒に益々混乱し、いろんな突拍子もない意見や質問が続出した。

ストは是非やるべしだ。が、今度こそは百パーセント勝つという保証つきでやって貰いたい。

そういうのがあるかと思うと、どういう意味か、わざわざ、

「俺は支部長にききたいんだが」

と、国家社会主義とはどういうものかと質問したものがあった。ひろ子はそれをきいて、はじめその質問者は、窮極には資本家の利益を国家が権力で守ってやる国家社会主義は、労働者の幸福とどんなに反対のものであるかということについて、誰にでも呑みこめるような説明をひっぱり出そうとしているのかと思ったら、そうでもなくて、山岸の曖昧な、階級というものの対立する関係の説明をぬいた答弁だけで、反駁さえも加えられずに終った。そして、

「議長!」

次には、まるで別な話のように、こんな提案がされた。