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ちぶさ
乳房
宮本 百合子
「中央公論」1935(昭和10)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页
その日は亀戸での話もされた。亀戸では応援活動のために特別な父母の会が催された。そして、特別に若い人が来て、それぞれの職場はちがっても、労働者であるということから共通に守られなければならない労働者としての連帯ということについて熱心に説明した。親たちは、はじめから終りまで傾聴し、その場で相当な額の基金が集った。ところが程なく意外な結果があらわれた。一人、二人と子供が減りはじめ到頭長屋から五人の子がその託児所へ来なくなった。
「何から何まで一どきに話しすぎたのがわるかったんです」
睫毛の長いそこの保姆が全体的な批判として云った。
「やっとききだしたところによるとこうなんです。話があんまり尤もで、もし争議へまきこまれたらとても断りきれない。もしそうなったら自分のクビが心配だから、今のうちに子供をひっこめちゃおうということになったらしいんです」
「なるほどね」
大谷は、一度ふーんと呻って、笑った。
「話が尤もでことわり切れまい、か。ふーん。それで、何かね、もうそれっきり本当に子供はよこさないんだろうか」
「ええ。今のところ来ないんです」
蛇窪でも、沢崎キンが警察へつれてゆかれてから、二人、三人、子供をよこさなくなった親たちがあった。