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よしんちょうしょ
予審調書
平林 初之輔
「新青年」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,371 字 · 23 页
どうも時々妙な発作を……」
予審判事は、原田老教授の言葉を中途で遮ぎって、たしなめるように、それでいて、厳然たる命令的な語調で言った。
「そんなことはおっしゃらん方がよいと思いますね。御子息の身体のことは、専門の医者に診察さして、ちゃんとわかっているのですから。あなたが余計なことをおっしゃると、かえって御子息のために不利益になりますよ。」
老教授の立場は、駄目と知りつつ藁すべにでも縋りつこうとする溺れる者の立場である。
「で医者はなんと申しましたか? やっぱりせがれを精神病と鑑定したでしょうな?」
おずおずと彼は相手の顔をのぞきこんだ。
「今も申し上げたように、そういう立ち入った御質問は、わたしの立場としてまことに困るので、本来からいうと何もお答えするわけにはゆかないのですが、ちょうど今日は、先程予審調書を発表したところですから、それも今晩の夕刊にはのるでしょうし、たびたび御足労をかけたことでもありますから、今日はまあ内密で、なんなりと御質問にお答えすることにしましょう。で、御子息の精神状態のことですが、なに少し興奮していなさるというだけで、別に異常はないという専門家の鑑定です。