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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
――生意気じゃないか、ひとのうちへ来て脅かすような声なんか出しやがって――」
「あのひとたちにすれば、はじめっから、たのみに来たんじゃないんだろうから……」
二人は縁側に出してある籐椅子のところへ戻った。
「あれでいいのさ。よすぎるぐらいだ。くせになってしようがありゃしない」
素子と伸子との生活で、伸子は子供らしいことをこわがった。夜道だとか、妙なきのこ、いも虫、けがや死人の話、怪談。そういうものをこわがった。だが、夜中に妙な物音がしたり、きょうのような人が来たりすると、素子は亢奮して上気した顔のままその場を動かず、別なとき臆病な伸子が出て見にゆくのだった。
素子は、あの三人を追っぱらった、という風にいうが、じかに目の前に並んだ三つのきたない若い顔々をみ、ルバーシカの下に三つの胃袋を感じ、三人の若い男の体臭さえかいだ伸子にとって、あの人々は、おっぱらわれなかった。伸子に、のこして行ったものがある。のこされたものは、従来の伸子たちの生活になかった一つの刺戟であった。
「――とんだ飛び入りが入っちゃった。おはぎ、出来てるよ、どこで食べる?」
素子は、伸子をいたわるようにいった。