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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「それは特別なの、実にあらたかなの。わたしの運勢は、実によく当りました。あなたもびっくりなさることよ」
机の引出しから半紙をもち出して、伸子はそれを、ほそい紙片にさいた。幅一寸ばかりの紙きれを、つばでしめして、鼻の先へはりつけ、その運命判断の、数字ばかり四角いコマに印刷してある見開きの頁の上に顔をさし出してフーオン・コロ・コロのフン、といって、その紙きれをふきとばす。紙片の落ちた数字にしたがって、その項をあければ、そこにその運命判じの漫画の答は出ているというしくみであった。
「へえ……奇妙な占いがあるもんだな」
そう言いながら、木下は鼠色の背広の袖を動かして、自分の鼻さきへ紙きれをはりつけた。
「フーオン・コロ・コロのフー?」
「ええ、そういうの」
そして、紙片が落ちた86という項を開いてみた。そこには、島田に結った若い女が、裾をかかげて、急流のまんなかに行きくれている絵がかかれていた。そして、美人流水の中に立って云々と、おみくじにあるような文句のほかに、くだけた言葉で、いまのあなたには何よりも決断が大切です。躊躇していれば、事態は悪くなるばかり、という風な文句が、その漫画家得意の、禅ぽいいいまわしでかかれていた。