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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
ときいた。
「駒沢をひきあげるならひきあげるでいい加減にこっちへ来てくれなくちゃ。電話のとりつぎだけでも、困っちまうのさ。いつ伸子さんはお立ちですかってきかれたって、おりません、わかりませんだもの。それに、お父様もいらっしゃるとき、せめて一枚家じゅうの写真ぐらいとっておきたいし……」
素子と伸子との旅行の噂がひろまって、問い合わせが電話のある動坂のうちの方へ来るらしかった。そういう外の空気の動きは、多計代の気持に影響した。多計代流に派手にうけとっている外国ゆきということのなかで、素子だけ差別をつけきれなくなっている。しかし、伸子は動坂の家には最少限しか逗留しないですむように日程を立てていた。
うち合せをすまして伸子が帰りかけているところへ、六尺近い体と、つき出た腹と、ブランデーやけのした顔色とで、日本人というよりいくらかジョン・ブルめいた砂場嘉訓が訪ねて来た。
「こんにちは、奥さん」
砂場は、さきごろまで二十年近くイギリスに暮して、イギリス人を妻にしている洋画家であった。しなれない日本流の立礼を、特にこの夫人には丁寧にするという風で、膝を少しかがめて辞儀をした。