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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
多計代はこの前会ったときからだの工合がわるかった嘉訓の細君の安否をきき、
「お宅のジョージさん、やっぱりドアのハンドルをみがいていますか」
ときいた。
「みがいています」
砂場嘉訓は重々しく首をうなずけると一緒に、右手を自分の前でふらりとふった。
「いまは、子供部屋のハンドルですハハハ」
「お母さんのお手伝いにもなって、いい道楽をおしこみになったこと!」
砂場嘉訓は、多計代のその言葉に答えず、ちょっとだまっていたが、上まぶたをひき上げるように伸子の方を見て、
「伸子さん、外国へはいつ立ちますか?」
といきなりきいた。今度の計画を砂場が知っていようとは思いがけなかった。伸子は、
「どうして御存じ?」
素朴に意外さをあらわしてきいた。
「わたしのところへは毎日、新聞記者が来ます。いろいろな人がどっさり来ますからね」
「立つのは十一月です」
「きょう何日? 十月二十日ですね、もうじきだ」
泰造が帰るまで、と多計代は砂場嘉訓が来るときまって出しかけられるリキュールのコップを煖炉前のテーブルの上においた。
「どうぞ御自由に――ちょっと失礼いたします」
つづいて伸子もその室を出ようとすると、砂場嘉訓が、