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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

伸子は、自分が佃のうちの細君であるということからみつが遠慮するのかと思った。かけぶとんをかぶってしまったみつに、伸子は気軽な冗談をいったり、慰めたりしたけれども、みつはかけぶとんから顔を出さず、しまいに、ふとんの中で泣いているのがわかった。伸子には、みつの激しい感情の動きの理由がわからなかった。妻である伸子のいない間、みつにばかり苦労をかけて、いまさら慰めてくれても仕方がない。みつにそう思われているのかと思い、伸子は途方にくれた心持のまま、蒲団の下に見舞の包みをさし入れて、かえった。あれは、本当はどういうことだったのだろう? みつを見舞いに行ったことや、みつの不思議な亢奮について佃に話したとき、佃は例のとおり一言、病気で亢奮しているのでしょうといったきりだった。間もなく、伸子はまたその生活に耐えなくて、もがきはじめ、そして最後の逃げ出しをした。そんなことがあったのは、すべて四年もまえのことだった。氷問屋の青塗りの露台は秋日にてらされて今もあすこに在り、佃はあすこのうなぎ屋の裏に別の妻と住んでおり、そこには子供がい、自分は、外国へ行こうとしている。