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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「――ともかく、わかるようにしておく」
といった。
「僕がいなくても、ちゃんとわかるようにしておくから、姉さん、安心していい」
伸子はその言葉を思い出したのだった。僕がいなくてもわかるようにしておくから……。それは、保だって旅行に出ることもあり、そこへ、行李の中のどの本を送ってくれとたのんだ伸子の手紙がつくことだってあるだろう。けれども、なぜ、わざわざあんな風に念をおしたんだろう。保の几帳面さからではあるのだろうけれども――。そのとき、タクシーがめじるしの椎の樹の下を思わず行きすぎた。素子が、
「そこ! そこ!」
あわてて大声で注意した。伸子も自分たちの降りる角を見まちがうまいとして、バックしはじめたタクシーの座席から腰をうかした。