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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
同じ桜の並木通りといっても、その通りは分譲地でのサラリーマン階級の雰囲気で、ちょいちょいした日用品の買いものに、住宅地の人が日に何べんもとおる通りであった。
坂の上の方をとおっている桜並木は、左右に植えつけられている桜が古木で梢をひろげ、枝を重くさし交しているばかりでなく、並木通りからまた深い門内の植えこみをへだてて建てられている住宅が、洋風にしろ、和風にしろ、こったものばかりであった。外壁に面白い鉄唐草の窓をつけたスペイン風の建物などがあり、桜並木には人気がなかった。雨の降る日にそこをとおると、桜の梢からしたたるこまかい雨の音がやわらかく並木通りのはしからはしまでみちていて、人っこ一人とおらない青葉のトンネルのような道のどこからか、ピアノがきこえたりした。
竹村、素子、伸子という順に並んで、そこをとおりぬけ、分譲地の外がわにひろがっている田舎道へ出た。茂った草道や新緑の濃い灌木のかげにまばらな農家があるきりで、畑はゆるやかに傾斜しながら、三人の通る道から遠くまで見えた。鵞鳥が十羽ばかり、白い小さい花をつけた灌木のしげみと腐った棚の間に群れていて、三人の足音をききつけると、首をのばしてやかましくさわいだ。