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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
多計代は、どうしてこんなに簡単に、保のことは隅から隅まで自分にわかっていると思いこんでいられるのだろう。
しかし、保のなかには伸子の生れつきとはちがったものがあって、姉と弟という以上に、保は伸子から自分をへだてているところもある。
思ったより早くかえって来た姉弟を見て、
「どうした」
素子が意外そうに出て来た。
「留守だった?」
「いいえ。温室は見たのよ、ね保さん。でもうちの方へはよらないで来たから」
出がけにこだわった気分をかえて、素子は二人のために食卓の世話をやいた。
食後、素子がその頃流行していたダイアモンド・ゲームを出して三人で遊ぼうといった。保は、
「僕、やったことがないから……」
とことわった。
「やったことがないって」
眼を見はるような表情で、素子は、
「こんなもの!」
そこへ、赤、黄、青と小さくコロコロしたコマをあけた。
「子供のやる遊びですよ。出来ないなんてことあるものか」
「――でも、僕やったことがないから……」
とうとう、保はその遊びをしないで、間もなく帰って行った。
「あのひと、どういうんだい、おそろしく変ってるね」
送り出したかえりの廊下で、素子があきれたようにいった。