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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
素子と伸子との感情生活は、独特な一つのかたちであった。素子にたいして、誠実であろうとする伸子の一般的なこころもちと、素子に、つよく意識されている伸子への傾注。それを理解し、自分たちの愛として素子のその心を傷つけまいとする伸子の従順さなどが、それであった。伸子には、二人の女の生活にある矛盾や混淆が、客観的にどういうものとして見られるかということはわかっていなかった。わからないままに、自分たちの生活から何かを覗き出そうとするような外部のいやしい興味に抵抗した。
伸子は竹村に対して、特殊の感情はなかった。よしんば竹村が、伸子にわかるような感情表現をしたとしても、伸子はそれで動けただろうか? この間、温室を見に行ったとき、夕飯の仕度をしながら、竹村と素子が手のことを話したときの微妙な感情の流れ、そこにも伸子は、自分の居場所から動けない自分の心を直感した。夕飯のあと、竹村は伸子に編物をするか、ときいた。
「なぜ?」
素子がきいた。
「いや、うちの奴は実にそういうことはしなかったからさ……女のひとなら、だれだって、編物ぐらいするのが普通だろう?」
竹村は、身辺に求めているうるおいのある情景の一つというようにそれをいった。