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にはいじん

二癈人

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,388 字 · 23 页

青空文庫

というのは、あなたの発作を目撃した人が少い。いや煎じつめればたった一人だったという点です」

井原氏は、相手がとんでもないことを空想しているらしいのに気附いた。それは実に、普通人の考えも及ばぬ様な恐ろしいことだった。

「一人ですって、いや決してそんなことはありません。先程も御話した様に、私が他人の部屋へ入る後姿を見たり廊下の跫音を聞いたりした人はいくらもあるのです。それから墓場の場合などは、名前は忘れましたがある会社員が確に目撃して、私にそれを話した位です。そうでなくても、発作の起る度にきっと、他人の品物が私の部屋にあるか、私の持物がとんでもない遠方に落ちているかしたのですから、疑う余地がないじゃありませんか。品物が独で位置を換る筈もありませんからね」

「いや、そういう風に発作の度毎に証拠品が残っていたという点が、却て怪しいのです。考えて御覧なさい、それらの品物は、必ずしもあなた自身の手を煩わさなくても、誰か外の人がそっと位置を換て置くことも出来るのですからね。それから、目撃者が沢山あった様におっしゃいますが、墓場の場合にしても、その他の後姿を見たとか何とかいうのは、皆曖昧な所があります。