轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にじゅうしんぞう

二重心臓

夢野 久作

「オール読物」1935(昭和10)年9、10、11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,188 字 · 129 页

青空文庫

モウモウと湯気を吹きそうな顔を平手でクルクルと撫で廻した。

「ヤッ。これあ……どうも……そこまで睨まれてちゃ……」

「ですからさあ……妾だって全くの世間知らずじゃないんですから、好き好んで泥濘を撰って寝ころびたくはないでしょ。ね。ですから云うのよ。モウ少し待って頂戴って……」

「もう少し待ってどうなるのです」

「あのね。妾もね……この劇場にも、探偵劇にも毛頭、未練なんかないんですけどね。折角、轟さんと一所に永年こうやって闘って来たんですから、せめての思い出に最後の一旗を上げてみたいと思ってんの……」

「ヘエ。最後の一旗……」

「こうなんですの……きょうは八月の四日、日曜日でしょう。ですから今日から来月の第一土曜、九月の七日の晩まで、丸っと一と月お芝居を休まして、座附の人達の全部を妾に任せて頂きたいんですの。費用なんか一切あなたに御迷惑かけませんからね。妾はあの役者達を連れて、どこか誰にもわからない処へ行って、妾が取っときの本読みをさせるの」

「貴女が取っときの……」

「ええ。そうよ。これなら請合いの一生に一度という上脚本を一つ持っていますからね。その本読みをしてスッカリ稽古を附けてから帰って来て、妾の引退興行と、呉服橋劇場独特の恐怖劇の最後の興行と、劇場主轟九蔵氏の追善と、大ガラミに宣伝して、涼しくなりかけの九月七日頃